「個人の好意」で続く部活。外部講師、教員どちらが担うべき?

「個人の好意」で続く部活。外部講師、教員どちらが担うべき?
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部活動は、教員のブラック労働の代名詞のように言われています。毎日のように練習があり、帰宅するのは22時を過ぎるとか、休みは「お盆と正月だけ」しかないとか、キリがありません。

果たして、部活は先生の仕事か、それとも外部講師に任せるべきか。30年の教師経験をもとに、分析してみました。

子どもには、2つのメリットがある

ではまず、子どもにとっての部活動には、どのようなメリットがあるのでしょうか。
それは次の2点に集約されます。

①学力アップに繋がる
→1日あたりの部活時間が「1〜2時間」と回答したグループの正答率は最も高く、次いで「2〜3時間」「30分〜1時間」の順となりました。また部活をしていないグループでは最も正答率が低いという結果になりました。文部科学省国立教育政策研究所

②生きるための技術(ライフスキル)が向上する

どれも子どもたちが成長し、社会人となる上では欠かせない力であり、「部活動」で培うことができるでしょう。

教員には大きな負担に

しかし、教員にとっては大きな負担となっている現実があります。

文科省の調査に夜と、男子中学生の約7割、女子の半数以上が部活に入っています。授業後も、多くの生徒が集まって活動すれば、ケガや生徒同士の衝突などといった問題も当然発生します。

しかも、指導する教師の半数以上は「競技経験のない部活動」の担当している、という実態があります。未経験の競技を育ち盛りの中高生に指導することが教員にとって大きなストレスになることは、容易に想像できます。教員のブラック労働が報道され始め、教員不足も深刻化する中、外部委託する学校や自治体も増えてきています。

しかし、私はそれでも「部活動の担当は主に教員が担うべき」と考えています。それは、

・子ども同士の人間関係に最も敏感なのが教師自身である
・部活動を「勝利至上主義」でなく「人格形成の場」として捉えられる
・トラブルの際に、いち早く問題に対処することができる
・すべての子どもに出番を与えるといった教育的配慮も可能

などの理由があります。

外部講師は、勝利至上主義を招く?

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教員が担うべきという主張は、私の実体験にも基づいています。過去に在籍していた学校では、野球部は教員、サッカー部は外部指導者に任せたことがありました。その結果、野球部には礼儀正しく、授業中の態度も良いなどといった生徒が多かった一方、サッカー部ではマイナスな行動が目立つようになりました。授業中は寝てスタミナ温存、土日に生徒指導上の問題行動が多い、などです。この流れは下級生にも受け継がれ、しばらくこういった状況が続いたことを覚えています。

外部指導者が悪い、とは思わないのですが、子どもたちの中には「勝つため、試合に出るためなら何をしたっていい」「3年間試合に出られないやつはクズ」という空気感があったように思われます。そもそも、有力な学生は名門校への進学やクラブチームへの加入をするので、学校の部活に勝利至上主義は必要ないはずです。

現場で改善すべき負担軽減策は

では、教員が部活顧問をしながらでも「健全な」教員生活を送るにはどのような策が必要なのでしょう。

それは、最低でも「給特法」の改正が必要でしょう。この法律は、「時間外勤務手当は支給しない。代わりに給与月額の4%を支給します」というもので、教員の『定額働かせ放題』を生み出しています。部活への報酬は十分ではなく、休日に4時間以上の顧問を行った場合に3,000円程度の「部活動手当」が支給されるのみです。

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しかし、現場では、部活は「全職員参加」という慣例があります。時間外手当をきちんともらえたとしても「体がもたない」のでは何の解決にもなりません

負担軽減のためには、部活担当の勤務開始を2時間遅らせることや、担当の数を増やし輪番制にすることが挙げられます。多くの学校では教員不足なので、外部指導者の協力体制をつくることも必要になるでしょう。もちろん述べてきたように、簡単にOKはできませんが。

管理職は、「俺も若い頃からずっとやってきた」という意識を少なからずもっています。その結果、部活動は「個人の好意」で存続しているという形です。この状況が続けば、教員不足は加速し、子どもたちにメリットのある部活は立ち行かなくなります。

法律はすぐに変えられないので、現場ではまず、先に書いた負担軽減策を講じて欲しいと思います。


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