昨年3月、全国の学校が休校し、学校行事や部活が中止になりました。そのため教員の残業時間も減少しました。しかし休校から明けた7月頃には、消毒作業など業務が増加。NPOの調査では約6割の人が「1〜2月と比べて時間外勤務が増えている」と答えています。
今年度からは少人数学級もスタートする一方で、教員の数は足りていません。そんな中、民間で働く人を学校現場に迎えようという動きが始まっています。今回は、その実例や働き方、さらには今教育現場で起きる「若返り」などについても触れていきます。

「羅針盤」運営者。
経済誌の記者/編集者としても働く20代。子どもや学校の話に高い関心あり。
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目次
ベテラン教員、大量退職
教員の平均年齢は、もう10年以上低下若返り続けています。「若返り」と聞けば、普通の企業では良い傾向だと思いますが、学校現場にとってこれは危機です。2007年を境に、公立小学校教員の平均年齢は下がり始めました。中学校でも2010年度から低下しています。

第2次ベビーブーム世代に対応するため大量に採用された教員が定年を迎えて退職。そのために教員の低年齢化=若返りが起きているわけです。
教員がさらに減る可能性
これがなぜ危機なのかはもう分かります。辞めていく教員の仕事が、現役教員へしわ寄せとなってなだれ込んでいるということです。
上が軽くなることは悪いことではないですが、残業が増えれば教員は減っていきます。2019年度に心の病で休職した人は5478人で過去最多に。その要因の一つが残業です。残業が増えて教員は辞めていき、現役の残業はまた増えていく。最悪の悪循環です。しかもこのデータは19年のものなので、消毒などコロナ業務が増えた20年度では、休職者は急増する可能性もあります。
民間人が学校を救う?
この状況を打破するべく、国も動き始めています。文科省が始めた「学校雇用シェアリング」をご存知でしょうか? コロナで打撃を受けた企業で働く、雇用維持が難しい従業員を、学校現場へ送るというものです。これの面白いところは「シェア」という考え方です。企業には属した上で、学校へ出向や副業、人事交流するという考え方です。
教員免許がいるんでしょ?という心配は要りません。文科省では、以下のように募集のイメージを出しています。詳しく知りたい方は画像をタップorクリックしてください!

「スクールサポートスタッフ」という働き方もあります。例えば大阪市が募集するのは
- 学習プリント等の印刷、配布準備
- 授業準備の補助
- 採点業務の補助
など、先生を支える仕事です。また北海道の十勝でも「スクールサポートスタッフ」の活用は進んでいて、帯広のある学校では主婦が活躍しています。
さらにもう一つ。これはニュースでも話題になった話ですが、教員免許を持つCAを学校に受け入れるという動きもあります。具体的にどのような役割を担うのかは分かりません。ですが仮にCAになる夢を持つ生徒がいたら、先生であり夢の実現者として教壇に立つことが出来ます。こうした民間人の投入が、子どもたちの好奇心を刺激するキッカケになるはずです。
子どもの安全が最優先
これまで、学校の教員不足の危機を脱する3つの可能性について書いてきました。しかし、学校に子どもを預ける親からすれば、安心できない部分もあるでしょう。教員免許を持たない人が学校にいれば、悪だくみをする人間もいるのでは……。いわゆる「わいせつ教員」など、すでに学校での悪質行為が多発しているという現状もあります。
懲戒解雇で免許を失った教員は、名前や失効日が官報に掲載されるようになっています。国は、その理由も明記していくという方針を示しています。わいせつ行為などで解雇された場合は、それが記載されるようになります。「学校雇用シェアリング」で雇用される人や「スクールサポートスタッフ」にも、仮にわいせつ行為などがあれば、それを公にするということを約束することが必要でしょう。
「子どもの安全」
この大原則だけは、忘れてはいけません。