圧倒的「女社会」の保育士には男性が必要

圧倒的「女社会」の保育士には男性が必要

保育士はその職務内容と、かつて『保母』と呼ばれていた歴史から、いまだに女性が大半を占める独特な仕事です。男性保育士も年々増えていますが、全体では5%ほど。現在私が勤務している保育所も女性が99%の職場でいわゆる『女社会』です。この特殊な環境で、どのような仕事をしているのか、また保育士の試験内容や保育業界の改善すべき点についてお話ししていきます。これから保育士を目指す方、興味のある方の参考になれば幸いです。


受験ハードルの低い保育士

保育士を目指すきっかけは子どもの妊娠でした。今後のキャリアについて考え始め、幼い子どもがいても、社会に出て貢献がしたい、経済的に自立したい、将来のビジョンも持てる仕事に就きたい…。

調べると、保育士は国家資格でありながら、受験できる条件が幅広いことを知りました。四年制大学卒など応募の条件を満たしていれば現場での経験や実習は不問。人手不足ということも頻繁に見聞きしていたこともあり、これだ!と閃きました。

資格取得には3年間の猶予がある

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試験は、一次がペーパーテスト、二次は描画、ピアノ、読み聞かせの中から選択する実技です。妊婦の期間や出産後子どもの世話の合間を縫って、少しずつ勉強を進めました。1回目の受験で部分合格(保育士資格は3年以内に全ての科目を合格すれば取得可能)し、さらに無資格でも働ける保育施設をハローワークなどで検索しました。子どもが入園する保育施設も同時に探し、なんとか現在勤める東京都の認証保育施設に就職することができました。就職から半年たった2回目の受験で二次試験もパスし、正式に保育士として勤務できるようになりました。

子どもの成長を実感できる

0歳から入園できる保育所では愛くるしい子どもたちと遊びながら保育士が簡単なルールやしつけを伝えてきいます。成長に伴い子どもたちは自己主張をしたり玩具の取り合いで引っ掻きが発生するなど、大変なこともありますが、オムツだった子が1人でトイレを済ませられるようになったり、保育所で経験したことをお家で話してくれるなど嬉しいこともたくさんあります。

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勤務を始めて半年以上経ち、仕事が楽しいと感じていた頃に翌年の人事の話があり、正社員への打診がありました。当時は育児との両立に悩んでいたものの、給与面で正社員になることはとても魅力的であったため、承諾しました。

『あなたが担当すると子どもは成長できない』

しかし、2年目に配属されたクラスでは園児のケガが多発し、前年度ではそこまで感じていなかった責任の重さを痛感します。「あなたが担当すると子どもは成長できない」。知識や経験不足によってミスが重なり、上司から言われた言葉です。子どもに対しても消極的になってしまうなど、悪循環に陥り、正社員になった半年後にまたパートへ戻ることに。給与面では厳しい現状ですが、地位が変わったことでクラス担任同士で意見が言いやすくなり、それによって子どもたちともそれまで以上に明るい気持ちで接することができるようになりました。

男性保育士が増えるべき理由

保育はチーム戦なので男女のバランスを取ることが必要です。現状5%ほどしかいない男性保育士が増えることで、元気に走り回る4歳、5歳の遊び相手をしたり、女社会ならではのトラブル予防にもなるでしょう。

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会話を通して女性とは違った考え方を子どもたちに伝える機会にもなると思います。私たちが無意識に子どもたちに偏った意識を植えつけている可能性があるからです。職員に対しても、新しい考え方を取り入れたいので、当然のこととして男性保育士が存在していて欲しいです。

給与や文化の壁

しかしなかなか増えないのはなぜでしょうか。まずは給与の面で壁があると思います。公立の園であれば公務員と同様に経験年数によって昇給しますが、民間だと社長や園長のさじ加減で決まります。給与は中小企業よりやや低めなので経済的安定を求める方には選ばれません。また『保育=育児、だから女性のほうが適している』という考え方がまだまだ根深いように感じられます。家事・育児が日本では女性が主に担う文化がすぐに変化しないように…。さらに、ごく一部の意見ですが、保護者から『女児の排泄に関わらないでほしい』という声が挙がるようです。保育士を目指す方が、根拠もない男性を差別するような噂話で志を失わないように願うばかりです。

男性保育士の確保のためだけでなく、非正規職員を含めた待遇の改善を行うことは不可欠です。国は2015年以降、5%の給与アップを実現しましたが、それ以降、賃金上昇の予定はありません。副業可能な私立の園でサイドビジネスをしたり、待遇の良い園に移ることなど、個人でもできることを見つけていくことが必要です。

実習を必須科目に

最後にもう一つ、提案を書いて締めたいと思います。

それは国家資格取得の条件に勤務経験や実習を組み込むことです。
私が求職していた時、ハローワークで保育士の職場体験がしたくて、チラシを多数読みましました。しかし就職を急いでいたり、子どもの預け先を考える余力がなく、完全に未経験のまま就職しました。入職前に現場を見学することはほとんどの園で可能ですが、ペアになる先生が誰なのか、休憩はどのように取っているのかなどは働いてみないとわかりません。ネットで検索しても悪口ばかりでとても参考にはなりません。ならば保育学校で経験するように、国家試験をパスした人も実習を組み込むことで保育業界の空気感を五感で知ることは大きなメリットになると思います。

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